言うまでもないことですが、理想的に事を運ぶなら、野生種や野菜 種が生育し繁茂している地域から来た荷物を取りよけることでしょう。


この理想に近づくために、多くの国は国立公園の設置を図ってきました。


熱帯でも、こうした保護区は自然保護において重要な役割を果たすという意識が育ちつつあります。


どんどん保護区が設置されつつあり、かつては自然保護に無関心だった国々もその例外ではないのです。


地図の上に一定の面積を限り、そこを保護区と呼ぶだけでは十分ではありません。


そこを監視し、守り、そして管理しなければならないのです。


そのようにして、保護区への一般の立ち入りを制限する必要があるのです。


ところで大きな問題が保護区を荒廃に追い込んでいます。


1つには、保護区というものが動物に対して設定されることが多く、植物はその対象となっていないからです。


植物は、人間からは守られますが、動物からはほとんど守られないのです。


保護されることで動物の個体が急激に増加し、その結果、植物が急速な被害を受けてしまうのです。


わずかなランにいたるまで絶滅の危機に追いやられる主たる原因は、熱帯林の伐採にあります。


ワシントン条約の存在は、決して故意ではないのですが、多くの植物の救助の妨げになっているのです。


付属書Ⅱの包括的保護規定によって、換金植物として輸出できないので、伐採される樹木とともに多くの植物には死が待ち受けています。


恐らく税官吏は、カトレア・スキネリ(付属書Ⅰ)とカトレア・フォーブジー(付属書Ⅱ)とを区別できないだろうと思います。


だからといって、包括的に保護すればよいというものではありません。


今日、コンピューター技術を駆使すれば、付属書のⅠとⅡのために、植物のイラストがついたより使い勝手のよいリストがつくれるのではないでしょうか。


そのようにして事にあたれば、あやしい植物はしかるべき専門家に照会できるでしょう。


包括的な輸出禁止規定はよい方法ではあります。


しかし、長期的に見ると本当に役に立つものではないのです。


ワシントン条約の主たる役目は、取り引きの抑制に効果を持つというとではありません。


むしろ各国政府をして、絶滅危惧種についての国際的な関心を呼び起こすことにあるのです。


多くの国々が、かつては自国の植物相の将来に無関心でしたが、いまや関心を抱くようになってきています。


ところで、ワシントン条約の書類そのものが、植物を絶滅の淵に追いやることがあります。


付属書ⅠとⅢの内容に関しては問題ないと思われますが、付属書Ⅱに適用される規制は、長い目でみると、絶滅危惧種の生存を脅かすものかもしれないのです。


メキシコや南アメリカからの報告では、農地開発地域で伐採作業が進行中であるといいます。


刈り払われた植物は、取引規制のあおりをくらって、畑の縁に積まれて腐るにまかされています。


ワシントン条約は、あくまでも国債間の取引にかかわるもので、国内での保護に関する取り決めはありません。


国内で保護されなければ、種は存続しえないでしょう。


明けましておめでとうございます。


今年もよろしくお願いします。


さて、ワシントン条約はどのような成果をあげているのでしょうか。


世界のほとんどの国はワシントン条約に調印しています。


そして、調印した国であっても、条約の精神を踏み躍るような法律の抜け道を持っているかもしれません。


1979年の4月、西ドイツの旅行グループが、メキシコでのサボテン採集行から帰国しました。


ワシントン条約の係官が税関に要請して持ち帰られた植物を調べたところ、3600個体もの植物が押収されたといいます。エグゼクティブトレードによると、ドイツの法律では、総額で240ドイツマルク(約100米ドルに相当)以下であれば、申告する必要がないのです。


たとえ付属書Ⅰに載っている植物だったとしてもです。


・・・というわけで、それらのサボテンは採集者の手元に返されることになりました。


カリフォルニアにおける研究者の見聞によれば、ワシントン条約の取り決めに違反する輸入植物が押収されているそうです。

同じ種でも、その希少性というのは、国によって異なることが多いです。


ですから付属書Ⅱにリストアップされているのはそのような植物で、取り引きを制限するかどうかの判断は関係国に委ねると記してあります。


TRAFFIC(動植物の取り引きに関する貿易記録分析)と呼ばれる別の組織が、種の国際取り引きを監視しています。


12、3年前、TRAFFICは、ワシントン条約加盟国の主な国際空港である実験を試み、ワシントン条約の取り決めがどのくらい綿密に守られているかを調査しました。


その実験は、サボテンを通関させるというものでした。


前もって申告するか、または税関カウンターにこれ見よがしに持ち込んだのです。


・・・その結果、サボテンを押収したのは、アメリカ合衆国とロシアだけでした。


しかしそれも、適切な植物検疫許可を得ていないという理由によるものでした。


サボテンの全種が付属書Ⅱに載っているということが、押収の理由ではなかったのです。


イギリスでは、税官吏は、検疫証明書に記入することを要請しました。


この実験で関係した税官吏は、誰一人としてワシントン条約を理解していなかったですし、ワシントン条約の存在すらも知らないように思えました。


税官吏の何人かは、ワシントン条約の書類の写しを手近に持っていながらもこんな状態だったのです。


ワシントン条約は、当初は一般に顧みられることはなかったのですが、今日では多少は状況が改善されたといえるでしょう。


現在のロサンゼルス国際空港では、掲示を張り出して、国外へ出る国民にワシントン条約リストにある植物を持ち帰らないよう警告しています。

付属書として知られる3つのリストが、その協約書の中にあります。


それらのリストは、掲載されている種を輸出入するのに必要な手続きを定めたものです。


付属書Ⅰには、絶滅が危ぶまれている種や属が記されています。


このリストにある植物を移送するには2つの許可を得なければなりません。


1つは輸出許可であり、もう1つは輸入許可です。


許可が下りるのは、その種の生存を謝かすことにならないと判断された場合のみです。


付属書Ⅱには、付属書Ⅰの植物ほど深刻な状況に陥っていない植物の種、それに関連する全属や全科も記載されています。


付属書Ⅱの植物を取り引きすることにより、結局は絶滅の淵に追いやる可能性があります。


このリストにはまた、絶滅の恐れはないけれども、そういう恐れのある種によく似た植物も記載してあります。


ランやサボテンなどといったグループでは似たものが多いので、専門家でなければ絶滅危惧種とそうでないものを見分けることができません。


したがって、いくつかの科は、種を特定しない包括的な保護の対象になっています。


輸出許可だけを得ればよいのは、この付属書Ⅱの植物です。

野生種の取り引きはビッグ・ビジネスです。


動物の取り引きは厳重に監視されているのに、植物の輸出入がどういう状態にあるのかなかなか知りえません。


1977年に、少なくとも3800万個体の植物がアメリカ合衆国に持ち込まれ、多くは許可のないものです。


絶滅の危機に追いやられる動植物は、当然のことながら第三世界諸国に多く発生し、そういうものが西欧の工業国に持ち込まれます。


このため、取り引きの制限にかかわる義務が生産力の低い発展途上国の両肩にかかることになります。


これらの国々がこの問題に対処するのをバックアップするために、国際自然保護連合は、国際取り引きの規制を関係当局に働きかけて、1973年に最初の、ワシントン条約を結ばせました。


この条約は、加盟10か国がワシントン条約にもとづいた立法化を行ない、書類に批准した後、1975年から施行されました。


1980年までには、その調印国の加盟リストは、多くの国が植物保護に力を注ぐようになるにつれ、59か国にふくれあがっています。

植物の保護問題に関しては、どちらかといえば、遺伝的崩壊についてあまりにも深く考えすぎていたきらいもあります。


栽培下では遺伝的多様性が失われてしまうからです。


たしかにこれはひとつの問題ですが、明らかに遺伝的に斉一な植物の小集団でも、存在しないよりはいいでしょう。


一つの種に見られる多様な遺伝子の数は、その種をプログラムするのに必要な「不変の」遺伝子の数に比べれば小さいものです。


栽培下における全体の遺伝子構造は、かつて野生下にあった時から変化するかもしれませんが、その種であるための基本的遺伝子構造は変わることなく存続します。


栽培下に置かれた植物は新種とはいえないでしょう。


しかし、わずかながらも変わった特徴を持つかもしれません。


実際に経験したことですが、植物を栽培下で繁殖していくと、当初は見られなかった驚くべき変異性が発現するでしょう。


カリフォルニァ大学のアーヴィン植物園で、野生下では絶滅したアヤメ科のモラエア・ロウブゼリから得られた最初の種子をまいたところ、変異のない6個体の生育を見ました。


ところが繁殖を繰り返した3世代後、咲き方、花の大きさ、花色の濃淡などにいくつかの変異を見ています。


変異の出方も、野生種とは異なるかもしれません。


・・・それでも、種が消滅してしまうことはないのです。


いずれの植物園も、植物の種の繁殖が非常に重要な問題であることを認識しています。


栽培下では遺伝的構造の変化が予想されます。


また不時の災害によって栽培コレクションが全滅する可能性があります。


したがって、植物園の総意としては、植物の種にとって唯一安全な場所は、自然の生態系のなかであるということなのです。


しかし、わたしはその意見に賛成しかねます。


数多くの自然の生態系が破壊されることのないよう望むものですが、現実はまさにその反対なのです。


国でも州でも地域でも、偽りなく何百もの微生育地があり、個々の種に見事に適応した生態系が存在します。


そんな微生態系を少しも考慮しないで、総体的な環境変化が頻繁に起こっているのです。


また自然の生態系が安定的なものであるかどうかすらも、未解決の問題です。


現在の状況がこのまま続くとすれば、保護問題で植物園はまことに重要な貢献をなすでしょう。


わたしたちは、資源が消えゆく世界に住んでいます。


完全を期すことはできなくとも、いくらかでも保護するほうがしないよりましです。


自然の生態系で種を保存するのは理想的なやり方かもしれませんが、わたしたちの住む世界は理想的な状態にはありません。


したがって、栽培コレクションの重要性を過少に評価してはならないのです。


とりわけ、自然界で絶滅したと考えられる植物が、予期せず栽培下で見つかることがあるのでなおさらでしょう。


こうして「助かった」種には、イースター島の樹木からイギリスの野草にいたるまであるのです。

TPCによる次の行動は、絶滅の恐れにある植物のどの種が、1980年の時点で栽培下で生存しているかを調査することでした。


TPCはその目的のために、新しい組織を設置しました。


植物園保護連絡組織です。


その最初の仕事は、各地域からの調査リストに掲載されている植物のどれが栽培されているかを調べることでした。


それから、必要なことは、絶滅が危惧される植物の繁殖を助長し、種子や植物の交換の仲立ちをすることでした。


この新しい連合体は、希少かつ絶滅危惧植物について啓蒙活動をし、調査資料を提供し、違法採集を抑制するために愛好家の植物入手用資料を作成することを最終的な目標としています。


この連合組織の最初の調査が示しているところでは、1980年までに、絶滅が危惧されるヨーロッパ産種1878種のうち520種以上が、ざっと40か所の植物園に栽培されており、235種を超えるマダガスカル産多肉植物が各地の植物園にあった、ということでした。


ソテツ類も含めて同様に、南アフリカやマクロネシア産植物の栽培リストも作成されました。


将来的には、絶滅が危惧される植物がどこで栽培されているかを示す"グリーンブック"をつくりたいということです。

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